IT導入の成否を分ける「天使のサイクル」「悪魔のサイクル」

本書の読みどころ

IT導入プロジェクトの約50%は失敗している事実をご存知でしょうか?

もしかすると、IT導入に関わった関係者・経営者の方々で失敗してしまったが故に本著に辿りついたかもしれません。

結論からお伝えすると、本著に記載している手順を踏んで頂ければ、高確率でIT導入プロジェクトを成功させることができます。

本著では、失敗する特徴を全て押さえた上で、どのように対策していけばIT導入を成功に導けるのかを「天使のサイクル」「悪魔のサイクル」という2軸でご紹介しております。

「悪魔のサイクル」
・プロジェクト管理を開発会社まかせにしてしまう
・要件が曖昧な状態で実装フェーズに進んでしまう
・追加要件の発生により、スケジュールが遅延し、開発費が増大する
・ニーズとの乖離によりシステムが使われず、ビジネス機会の損失を生む

上記の「悪魔のサイクル」に1つでも当てはまっている方は、ぜひ本著を御覧頂き、IT導入の成功に役立てていただけますと幸いです。

著者紹介

DX時代のIT導入マニュアル
~経営者向けシステム外注とアプリ・Webサービスの開発を成功させるための解説書~

大芝 義信(おおしば よしのぶ)

株式会社グロースウェル代表取締役
1975年八王子生まれ。ビジネス・ブレークスルー大学大学院 経営管理修士(MBA)取得。2001年からITに携わり、楽天、ミクシィ、GREEでキャリア形成。2013年、マザーズ上場会社でCTOを経験後、2016年、(株)グロースウェルを創業。プロダクトや開発組織アドバイザーとして累計100社、現在は顧問先20社を支援している。国内トップクラスのEQカウンセラーとして、累計500名超を担当した実績を持つ。

序章 企業の命運を分けるIT導入

多彩なIT施策があらゆるビジネス課題を解決する

あなたの会社では、ITを充分に活用していますか?
そしてその効果が、経営に明確に表れているでしょうか?

日本の中小企業には、素晴らしい技術や発想、創意工夫の能力を保有しながら、それらを最大限、経営に活かしきれていないケースが非常に多くみられます。
そのもっとも大きな理由は、ITの活用が不充分であることです。
現在、「経営」「事業」「業務」という企業活動のすべての領域において、さまざまなITソリューションが利用されています。これらはコスト削減や、売上向上、そして経営判断力の向上を実現します。
では一体なぜ、多くの中小企業はIT導入に消極的なのでしょう?そこにはIT導入に対する、いくつかの〝誤った思い込み〟が関わっています。

「ITは〝コスト削減〟のための道具で、売上をアップさせるものではない」
「IT導入は、資金や人材などのリソースが豊富な大企業がおこなうものだ」
「ITは目先の課題解決には向いているけれど、不況や人手不足など環境課題に対しては効果が期待できない」
「業種によっては、大掛かりなIT導入は不必要だ」

結論から言えば、これらはすべて誤りです。
ITの効果は「コスト削減」「業務効率化」に限りません。「品質向上」「新規顧客の開拓」「顧客満足度の向上と関係深化」「販売チャネルの創出」などをかなえて「売上向上」を果たし、さらに「新製品の創出」や「新規事業の創出」さえ実現します。近年では、経営資源の見える化などにより、「経営判断力の向上」も有用な効果のひとつとされています。
また現在、IT導入には、かならずしもかつてのように多額の資金が必要とは限りません。大企業だけでなく中小企業が導入することが充分、可能な状況になっていますし、むしろビジネス環境の影響を受けやすい中小企業こそ、ITによって経営を盤石にするべきです。
さらに、ITは労働人口の減少や市場の縮小をはじめ、働き方改革、グローバル化の波、顧客の購買意識の多様化、頻発する自然災害など、経営環境の課題に対しても頼もしい解決策となります。現在、そしてこれからの厳しい環境に対して、ITなしで立ち向かうことは考えられません。
また、ITはすべての業種の事業を強力に支援します。「経験・勘がものをいう職種」であっても、「感性がものをいう職種」であっても、事業を発展させ経営に貢献するITの活用法が存在します。実際に伝統産業で活用され、企業体力を増強させているケースは増加の一途をたどっています。

現在、中小企業におけるITの推進状況は、残念ながら充分とは言えません。しかし言い換えれば、経営が思うように安定しない会社にとっても、事業拡大のため苦心している会社にとっても、ITを 武器にすることで状況を打開し、伸び伸びとした成長を実現する余地が大きいということです。
本章では、IT導入があなたの会社にとってどのような価値を持ちうるのか、その一端をお伝えします。

あなたの会社に〝余裕〟を生んで飛躍を支援するIT導入

ある企業が今よりも成長するためには、労働力の拡大・最適化が必要です。つまり事業に携わる〝社員数の増員〟や、注力すべき業務にあてる〝時間の延長〟など、投入するリソースの拡大が不可欠です。
ただしITを活用すれば、労働力を拡大するための大規模な投資は必要ではなくなります。例えば社内でおこなわれる業務のうち、単純作業についてはITを用いたシステムに置き換えることで、大いに効率化を図ることができます。
従来と同じボリュームの仕事を少人数でおこなえるようになるため、人件費を削減することもできますが、この余剰の人的リソースを、より経営に貢献する知的で創造性の高い労働にあてれば、これまでと同じコストで会社を飛躍させる新たな取り組みをスタートさせることができます。
IT導入は、このような事業体制の転換を実現し、企業の成長スピードを加速させる起爆剤になります。

これからの時代、先進ITの普及によって、幅広い領域の業務が代替される社会が実現していきます。これは決して遠い未来のビジョンではなく、今後、ほんの10年のうちに起こる社会変化です。スマートフォンやタブレットが普及してからの10年で、私たちの暮らしやビジネスがどれほど様変わりしたかを思い起こせば、納得されるでしょう。
あなたの会社がこうした激しい変化に取り残されず勝ち抜いていくためには、今すぐにさまざまな業務の本質的な必然性を見極めること、つまり「本当に人間がやるべき業務なのか」という視点を絶えず持ちながら、業務プロセスを大胆に改革することが重要になります。

身近な一例として、1名のスタッフが電話での予約受付業務を担当する、小規模なクリニックの場合を考えてみましょう。このような業務体制では、予約窓口は電話に一元化されているため、原則的に診療時間中は常時1名の担当者を配置する必要があります。
しかしこの業務は本当に人間がおこなうべきものでしょうか。もしクリニックの顧客層に高齢者が多く、インターネット利用率が低いといった場合、人間がおこなう価値は高いと言えるでしょう。それでも総体的に見ると、受付業務はIT化し、インターネットによる予約システムを導入するメリットのほうが大きいと言えます。
今まで電話応対をしていたスタッフは、同じ労働時間を別の業務にあてることで、クリニック全体としても、より最適な人的配置が可能になります。
このように「人がやるべき業務なのか、システムで置き換えることができるのか」といった視点であらゆる業務を改革し効率化を果たすことで、経営を力強く安定させることができます。

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