まえがき
この本を手にされたあなたへ
生きづらさとはある種、生きていくなかで避けては通れな いテーマなのかもしれません。
私は心理臨床の仕事をしています。いわゆる「カウンセラー」「セラピスト」と呼ばれる職業です。私が出会う相談者の多くは 働いている人で、若い方から年配の方まで幅広い年齢層の人です。ご相談内容は、職場の人間関係・仕事の適性・キャリアデ ザイン、また仕事に関わる事柄以外にも、家庭問題・健康に関 わること・恋愛についてなど、たくさんのテーマがあります。
その中には生きづらさを抱えてご相談にこられる人もいます。
そもそも、私がなぜこの仕事に就いたのかといえば、自分自身が幼い頃から生きづらさを感じながら生きてきたからです。
思春期のころ、自分が生きるために心理学を学びたいと強く感じました。また、この先も生きていかなくてはいけないのだとしたら、自分が「生きるために必要としたもの」を「同じように必要とする人に還元する」ことしか自分にはできないと思いました。
「人の役に立ちたい」という高尚な志ではありません。「私が生きるために」という動機で、心理学を必要としたのです。
実際にこの仕事に就いてみると、私の他にも生きづらさを感じながら生きている人がたくさんいることがわかりました。 また「生きること」よりも「死」に対して親和性を感じる人が少なからずいることも。
このことについて私は否定しませんが、かといって積極的に肯定しようという立場でもありません。ありのままに受け止め、それを抱えながらどうやって生きていくかを、ともに悩み考えたいと私は思っています。
生きづらさはその人その人で違います。
他の誰かと比べることに意味はありません。
もしあなたが生きづらさを抱えている人だとしたら、あなたにとっての生きづらさとは何でしょうか。
生きていることに疑問を持たない人からは想像できないところで、生きづらさ人は立ち止まり、悩みます。生きていると「なぜ?」「どうして?」ということばかりで、先に進むのが嫌になったりもします。
それでも私は、生きづらさを抱えながらでも構わない、あなたが自分らしい人生を生きてくれることを願っています。
そして生きづらさは必ずしも「ずっと抱えていなくてはならないもの」ではないこと、「手放す自由をもっている」ことを、生きづらいと感じているあなたに伝えたいと思っています。
生きることに悩んだり疲れたりしたときには、カウンセリン グがあなたの助けになるかもしれません。カウンセリングや心 理療法は、あなたを無理やり変えようとすることはありません。 あなたが抱えている生きづらさを否定することもありません。
ただ、あなたが必要とするならば、自分自身と向き合うことをサポートし、あなたらしさを発見するお手伝いをします。
そしてあなたの自分らしさが見えてくると、生きづらさの裏側にあるもの――あなたが本当に欲しいと思っているもの――に、気づくことができるでしょう。
この本は、読み進めることで実際にカウンセリングを受けているような体験をしていただけるよう工夫しました。
読み終えたとき、あなたが、
「いろんなことを含めて“私らしさ”が見えてきた」
と感じていただければ幸いです。
そしてまた、あなたの人生で抱えてきた生きづらさをほんの少し手放してみたとき、今よりほんの少し生きることが楽になり、生きづらい自分とうまく付き合えるようになることを願っています。