はじめに
〝社長の右腕〟が会社の命運を左右する
この本を手に取られた、経営者であるあなたにお尋ねします。
あなたには〝右腕〟と呼べる、会社のナンバー2がいますか?
そして、有能な右腕が会社にどれほど多様な恩恵をもたらし、また右腕を持たないことがどれほど多様なリスクをもたらすか、あなたは本当に知っているでしょうか――?
「会社に右腕となる人間がいなくてね、いつまでも孤軍奮闘だよ」
「自分と同じ視点で会社のことを考えられる人間がいないんだ」
「しっかり鍛えようと教育してきたが、何が悪かったのか失敗してしまった」
「右腕が務まる人材を育てたいけれど、一体どうしたらいいものか」
私たちがご支援している会社の経営者から、そんなご相談をいただく機会が近年とくに増えています。経営者の方々が真剣に、ときに切羽つまった思いで右腕を求める事情や背景は、会社によって実にさまざまです。
多店舗展開や事業拡大を計画している。
経営者が忙し過ぎて手が回りきらず困っている。
次世代に事業承継をする時期が迫っている。
会社の規模・業種にかかわらず、そして会社がライフサイクルのどの段階にあるかにかかわらず〝有能な右腕〟の存在が会社の命運を左右します。右腕の育成は、会社の存続・発展に欠かせない鍵であり、経営者が最優先で取り組むべき課題のひとつと言えるのです。
会社を存続させるための〝基本の一手〟
実際に、右腕がいないため会社存続の危機にある会社は少なくありません。
・会社を担う覚悟と責任感
・経営的視点からの判断力や実行力
・現場を熟知した上で評価、指導する力
・ビジネス環境の変化に目を向け、将来を見すえて対応策を講じる力
そうした能力を持つ幹部がいないまま、すべてを経営者が担っている会社が非常に多いのです。
経営のノウハウも、顧客情報も、労務管理も、すべて経営者ひとりの頭の中にある。従業員は、自分が担当している業務のことしか把握しておらず、会社が成功しようが危機に陥ろうが、どこか他人事。
そのような状況で、もし経営者が倒れたら……?
あっという間に廃業の危機が、現実のものとして迫ってきます。「明日からでも、自分の代わりを務められる人間」を育成することは、どの会社にとっても急務ではないでしょうか。
社長の能力を拡張し、会社の成長を実現する
また有能な右腕は、会社の成長のためにも不可欠です。
日本が誇るホンダ、トヨタをはじめ、世界を席巻するまでに発展したグーグル(Google)、アップル(apple)など大企業のケースが有名ですが、中小企業にとっては、右腕の存在がより重要なポイントになります。
というのも、ひとつには経営者ひとりで物理的に抱えられる仕事のボリュームが限られているためです。単純に事業や会社の規模を大きくしたければ、自分と同じように考え、動ける人材が必要です。
さらに、中小企業の場合は抜き差しならない事情もあります。
現在、日本の中小企業はビジネス環境が目まぐるしく変化する、熾烈な時代を迎えています。
・少子高齢化による働き手不足、市場の縮小
・ITの進展による、新サービスや新商品、新たなビジネスモデルの登場
・原材料の調達や人材の採用、あるいは販売先を海外に求めるグローバル化の波
・政府によるキャッシュレス化、働き方改革の推進
こうした中、環境の変化にうまく対応できるか否かが会社の行方、つまり飛躍するか衰退するかを決定します。ある会社が新たな一手を投じて波に乗る中、「現状維持」を選んだ会社は波にのまれてしまう――。中小企業は今、そんな厳しい現実の中におかれています。
そのため現状維持で精一杯の能力、マンパワーしか持たない状況は、会社にとって大きなリスクとなるのです。