大阪から生まれたスイーツベンチャーブランド
急成長するベイクドマジックの舞台裏

本書の読みどころ

「世界中に美味しい笑顔の輪を創造する」

この想いから、スイーツブランドを創業する事になった。
東大阪という地元で12坪の売り場からスタートし、今では、百貨店、駅・空港など国内外に直営14店舗と専用売場17店舗を構えるまでに成長する事ができた。

しかし、ここまで来るのに、散々な想いを経験してきた。

創業前によく読んでいた経営者が書いた本にも、壮絶な経験が記された内容を見たりしていたが、本当に似たような事を数多く経験した。

本著ではベイクドマジックが、どのようにしてここまでの規模を築く事ができたのかを、余すことなく執筆している。

成功することを本気で決めた人間の、泥だらけストーリーを是非ご覧下さい。

著者紹介

経営者のベイクドマジック式
“スイーツベンチャー道”の歩き方

大串 和也(おおぐし かずや)

1980年大阪府生まれ。株式会社ヤムヤムクリエイツ 代表取締役社長。多数のTV番組や雑誌等のメディアで話題となった「焦がしシュークリーム」をはじめ、オリジナルスイーツを数々創出・展開。10代後半から20代前半まで海外でサーフィンに明け暮れ、その時の経験が将来の方向性を決める。
2010年に起業後、百貨店や駅、空港など国内外に直営とFC合わせて15店舗と、専用売場26店舗を構えるまでに成長。
2016年には(公財)食品流通構造改善促進機構主催の「第25回優良経営食料品小売店」に表彰され、2018年には経産省主催の「はばたく中小企業300社」に表彰される。海外からの出店オファーを多数受け、2016年にベトナム、2019年にインドネシアとマレーシアに進出。現在は中国や、その他ASEAN諸国からの引合に応えて、多数の国で開設するプロジェクトに取りかかっている。

プロローグ

2010年4月、僕は地元・東大阪にわずか12坪の焼きドーナツのお店「ベイクドマジック(Baked Magic)」を開店した。
ロハス指向、ヘルシー指向のスイーツ店という物珍しさのせいもあっただろう、ありがたいことに開店初日から山盛りのお客さんが長蛇の列を作ってくれ、お店は大繁盛した。お客さんは僕やアルバイトのスタッフに、「これ美味しいなあ」「可愛いお店やなあ」と温かい声をかけてくれた。
春らしく気持ちのいい青空の下、〝我が店〟は開店祝いのスタンド花とお客さんの笑顔で、賑やかに飾られていた。華やいだ光景を目にして、それまでの苦労が一気に報われたようだった。
ところが本当の苦労はここから始まった。3か月の間はお客さんの行列が途絶えず、休憩をとる暇もなく忙しくしていた僕らだったが、それはつかの間のお祭りのようなものだったのだ。
お店は嘘のようにガランとしてしまい、焼き上げられたドーナツは閉店時間になってもショーケースにぎっしり並んだままだった。まさに祭りの後の静けさだ。僕らは「あんなに美味しい、美味しい、言うてくれてたのに」と呆然としてしまった。あっという間に運転資金も底を尽きそうになり、ベイクドマジックは開店からわずか1年足らずで廃業の危機を突きつけられた。

あのピンチをなんとか乗り越えることができたのは、奇跡のようなことだったと思う。ベイクドマジックはその後も危機とチャンスの大波を繰り返し浴びながら、何とか命をつなぎ、創業からすでに9年を超えている。
不安で胃がチクチク痛くなり、寝つけないことが何度もあった。悔しさでギリギリと歯ぎしりをした日もあった。そして、信じられないようなチャンスの到来に、大人げないガッツポーズで吠えた日もあった。

東大阪のちっぽけなお店からスタートした事業は、幸いなことにその後、コツコツと成長を刻んでいる。ブランドの運営会社として株式会社ヤムヤムクリエイツを設立し、今は「ベイクドマジック」「ベビーマジック」というふたつのブランドを育てている。さらに新業態の準備も着々と進行中だ。
商品開発にも、つねにフルパワーで取り組んでいる。ベイクドマジック倒産の危機を救った「黄金のキャラメルパイ」、ブランドを代表する看板商品となった「焦がしシュークリーム」。美味しさと楽しさでお客さんが感動するような〝世界唯一のオリジナル商品〟が、僕らの創造のアイデンティティだ。
店舗は、東大阪の「本社 スイーツ・ラボ店」を中心に、フランチャイズ店を含め、大阪「JRエキマルシェ新大阪店」「イオンスタイル堺鉄砲町店」、和歌山県「和歌山川辺店」、静岡県「イオンモール浜松志都呂店」、広島県「広島LECT店」「ゆめタウン広島店」、高知県「高知 蔦屋書店」、福岡県「博多マルイ店」、千葉県「イオンモール成田店」、富山県「ファボーレ富山店」。そのほか常設販売ブースを関西国際空港、大阪国際空港、JR新大阪駅など交通の要所や、大阪、神戸、滋賀、岡山のサービスエリアや、商業施設、お土産物屋さんにも展開している。
さらに販売チャネルを拡大するため、インターネットの自社サイトと楽天市場で通販サービスをおこない、卸や百貨店での催事販売にも注力している。イオン、生協、成城石井、北野エースをはじめ、たくさんの人々から信頼されている大手量販店、そして全国の百貨店を通じて商品を届けられるようになった。

ヤムヤムクリエイツのブランドチェーンは今、世界へと足を延ばしている。国内での認知度や実績もまだまだ未熟なひよっこのブランドだけれど、光栄なことに海外からの出店オファーが多数、寄せられるようになったのだ。
まずは2016年、ベトナムのハノイにベイクドマジック海外1号店を開店した。現地パートナーの尽力もあって、7店舗までスムーズに拡大していったので、現地法人を設立し工場も建設した。次いでベトナムでの新たなチャレンジとして、お好み焼きをメインにした鉄板焼きのお店「まる太」をオープン。さらに2019年2月、インドネシア企業からのオファーに応えて、ジャカルタにもベイクドマジック第1号店を開店した。
そのほか、韓国企業、マレーシア企業と、進出に向けて綿密な協議の真っ最中だ。
現在は、さらに大きな挑戦の中にいる。中国からの引合に応えて、中国全土で数百店舗を開設するプロジェクトに取りかかっている。この吹けば飛ぶような弱小企業に、巨大資本と中国共産党が後ろ盾となった現地企業がオファーをくれたのだ。
「それ絶対、騙されてますやん」という声もあるだろう。でも慎重に慎重を期し、リスクを可能な限り最小にした契約をとりつけてある。最終的にノウハウを盗まれようが、現地法人を乗っ取られようが構わない。そうなったら全力で、やせ我慢してでも笑い飛ばしてやろう、そう心に決めている。

そもそも僕が起業したのは、ひとつの夢をかなえるためだ。自分のブランドを世界中に広げること。美味しくて人を幸せな気持ちにするスイーツで、平和な世界制覇を達成することだ。
海外進出は果たしているものの、この目標の実現には、まだ遠い道のりが続いている。会社としての基礎体力を、もっと頑強にする必要がある。その一方で、中国進出、インドネシア進出、ベトナム進出のようなビッグプロジェクトに挑戦し続け、成功し続けなければいけない。苦難も課題も一つひとつ突破して、自分で設定したゴールを目指す。今は夢に向かって、ようやくスタートを切ったところだ。

この本は、お金もコネも経験も知識もない僕が、無謀とも思えるでっかい目標を掲げ、苦しみながら疾走している過程をお伝えするものだ。僕自身まだ成長の途中で、人さまの役に立つ経営テクニックやスイーツビジネス論を提供するだけの経験、知識は充分でない。それに、僕のブランド経営の手法はかなり独特だから、参考にしてもらえる部分はそう多くないかもしれない。
でも、これも叩き上げでブランドを成長させてきたひとつの実例であることは、まぎれもない事実だ。同じようにもがきながら頑張っている方、これから起業しようという方には、何かしらのヒントになる部分、勇気につながる部分があるかもしれないと思う。それから退屈している人には、いい暇つぶしにもなるだろう。
僕の小さな成功体験や、痛い思いをした数々の失敗体験が、あなたの成功と幸せに役立つことを心から祈ります!

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