組織が瞬時に変わる方法が知れる!
ウソみたいなホントの手法とは?

本書の読みどころ

企業の倒産数は、2019年上期(4~9月)で前年同期比3.2%増の4256件となり、これまで数年、低下水準であったのが、ここへ来て持ち上げられる結果となりました。

後継者不足・人材不足・採用難など、企業にとってさまざまな課題がある中で、対応しきれず倒産している企業が増加傾向であることが伺えます。

上記のような経営課題に、急務なのが「企業体質の変革」であると本著にて説いています。


▶ 企業を成長させない魔物の存在
▶ 硬直した組織を一瞬で蘇生させる方法


などなど、類書には記されていない現代に必須な内容を、読書嫌いの方でも読みやすいよう工夫しておりますので、企業継続に課題を抱える経営者の方は、ぜひ一度手に取って見て下さい。

著者紹介

今のやり方で、会社は存続できますか?
経営者の“たった一言”で、人が定着し、組織が活性化する

川原 一紀(かわはら かずのり)

鹿児島県阿久根市出身。集団就職で愛知県に移転し、大手不動産関係に就職。勤めていた時にバブルが崩壊する。学生達による学生のための募金活動(足長おじさん運動)を見て、企業経営の在り方に疑問を持ち、経営コンサルタントを目指してコンサル会社に入社。厳しい現実と厳しい指導を受け、3年間冷や飯を食べながら当時の代表のカバン持ちをする。なかなか芽がでず退職しようと思った矢先、うつ病で苦しむ経営者の手紙によって経営の本質に気づかされ、それをきっかけに多くの経営者と出会い、次々と企業にはびこる問題を改善していく。しかし、もっと現場に接したいという思いから、上席執行役員を最後に退社。その後は中小企業の社長になり、経営コンサル活動を行っている。本書は延べ3,000社以上かかわった企業の改善や経営の本質などを中心に綴ったものである。

1 加速度的に広がる企業離れ

先日起こった出来事です。
経営相談に来られた経営者の会社を訪問し、雑談をしている途中、突然「退社を予定している社員と一度面談してもらえませんか?」と頼まれたので、快諾して面談することになりました。
この求人難、基本給を1・75倍に上げてようやく来てもらった人材だったそうですが、退社したいと申し出があったのは、入社してわずか3カ月。
私はその社員と面談し、退職理由を尋ねました。しかし、「一身上の都合」としか言わず、ただただ時間は過ぎていきます。面談開始から30分が経とうとしていたので、私は「これが最後です。言いたいことはありますか?」と聞いたところ、その社員は一瞬うつむき、再び私の目を見て「前職が嫌だったのでこの会社に転職しましたが、前職以上にこの会社は 酷かった」と言い残して、面談は終了しました。

さて皆さん、どこの企業でも社員が途中で退職することはありますが、退職する理由をご存じでしょうか?
第一章では「なぜ人が企業から離れていくのか」、その根本原因を解明していきます。

1.なぜ人は定着しないのか

私はたまにインターネットで、求人関係を扱っている企業のサイトを閲覧することがあります。その中に、退職者に対して「退職理由」をアンケートしているサイトがあり、その調査結果がランキング形式で掲載されていました。内容を見てみると……

1位 ほかにやりたい仕事がある
2位 会社の将来性が不安
3位 給与に不満がある

とありました。また別の求人サイトでは……

1位 給料が安い
2位 やりがいを感じない
3位 企業に将来性がない

とあったのです。
内容に若干の違いはありますが、これらの理由は退職するきっかけにすぎなかったのではないかと私は推測します。

2.会社を去る人の本音は「会社はいくら言っても変わらない」

理由も分からず人が退職していくことを、簡単に片づけてはいけません。そもそも問題がある社員がいたり、ブラックと言われたりするような企業は論外ですが、成熟した経済の中で、将来に向かって進んでいる成長過程の企業は、維持させていくだけでも大変です。
そんな企業において、せっかく育てた社員を原因も分からず退職させることが、大変な痛手になることは想像に難くないでしょう。
企業からの改善依頼で最初に社員面談をするのですが、その段階で退職していくほとんどの人が「会社はいくら言っても変わらない」と、自ら戦力外通告をして去っていきます。「会社はいくら言っても変わらない」――とても意味深長な言葉ですね。

経営者側からすれば、この言葉は「勝手な言い分」、あるいは「致し方ないこと」と感じるかもしれません。しかし理解しておかなくてはならないのは、学卒社員が入社前と入社後を比べて退職するのと、長い年月にわたって勤めていた社員が退職するのとでは、意味が違うということです。
もし本人そのものに問題があるのなら、退職されても差支えはないでしょう。しかし企業側に問題がある場合、今までその問題が放置され続けていて、将来に向かって改善される兆しがないと、働く側は次のステージに行く準備をし、タイミングが合えば退職してしまいます。

この事態は極めて大きな問題です。もし退職者が家庭のある者なら、よっぽど耐えかねないことが起こっていたと思わなければなりません。
そして退職者は退職理由を本音で話しません。なぜなら本音を話して強い引き留めに合うのが嫌だからです。上役が退職の理由を聞き、改善するからと引き留めたところで、退職者からすれば「問題が分かっていながら、なぜ早々に対処しないのか?」と思うだけです。
「会社はいくら言っても変わらない」――退職者が最後に残す言葉は、経営者に向けた警鐘なのです。

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