突然ですが、問題を出します。
日本で最も高い山をご存じですか?
きっとこの問題は、ほとんどの方が答えられるでしょう。そう、答えは富士山(標高三,七七六メートル)です。「突然、何の話だ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。
では、次の問題です。
日本で二番目に高い山をご存じですか?
この問題を、今まで多くの方に伺ってきましたが、残念ながら答えられた人はほとんどいらっしゃいませんでした。
答えは山梨県南アルプス市にある、北岳(標高三,一九三メートル)です。
では、世界で百メートル走が最も速い人は誰でしょうか? 同様に、二番目に速い人はご存じでしょうか?
きっと、ウサイン・ボルトが一番なのはほとんどの人が答えられるのに、わずか〇.一一秒の差のタイソン・ゲイやヨハン・ブレークを答えられる人は、陸上競技によほど詳しい人以外はいないでしょう。(二〇一七年時点)
私がお伝えしたいことは、何となくご理解いただけたのではないでしょうか。
一番と二番の差がわずかであっても、周りからの認知度の視点から考えると、その間には圧倒的な差があります。
このことは、仕事・職場でもいえることです。たとえば営業職の場合、毎年MVPなどの賞を設けている会社も多いでしょう。ここでもMVPを受賞した人と、二位の人では、雲泥の差があるのです。しかも大切なポイントとしては、二位だった人がたとえ、MVPの人よりも努力を重ね、より仕事に時間を割いていたとしても、周りから評価されるのはMVPを受賞した人なのです。極端にいえば、仕事における評価は、いかに目に見える成果を出せるか否かで決まってしまいます。そして、目に見える成果を挙げるためには、目に見えない、誰にも評価されることのない仕事をするのです。
よく、「最近、週二で徹夜して大変だよ~」などと自慢する人がいますが、それで成果が出ていなければ、何の意味もないのです。
つまり仕事をする上では、まず何よりも成果にこだわらなければなりません。特に「一位を獲る」ことにこだわってほしいのです。仕事でもスポーツでも一位を獲った人は、その後も一位を獲り続ける人が多いのではないでしょうか。
一位を獲ったときの達成感は一度味わってしまうと病みつきになるものです。弊社に、外資系製薬会社に勤務していたコンサルタントがいます。彼は同期が五十人いる中で、二年目にトップを獲りました。そうなると同期や営業所・支社の先輩から、一気に仕事で認められるようになりました。
突然、話したこともない人から連絡がきて、「どうしたら〇〇病院のように、交渉が難しい所でも売り上げが上がるのですか」などと質問をされたり、「ぜひ担当されている〇〇先生を、関西支社での講演に呼んでいただけませんか」など、新しい仕事を依頼されたりすることも多くなったそうです。また、それまでベテランに任せられていた仕事も、直接上司に、「僕にやらせてください!」とお願いすれば、大きな仕事でもトライできるチャンスを手に入れることができるようになったのです。
ほかにも外資系製薬会社でMRとして勤務していたコンサルタントがいますが、彼いわく、二年目にトップを獲ってからは、横浜市内の基幹病院や大学病院を任せてもらえるようになったそうです。そうなると、さらに周りから期待され、「こんなに大きな仕事を任せてもらえているし、期待してもらっている以上、しっかり成果を残さなければ!」と、良い意味で自分自身にプレッシャーをかけることができます。
一回でも一位を獲ったときの達成感を味わってしまうと、「あのときの達成感をもう一度味わいたい!」と、心から思うようになるのです。
つまり一位を獲ることで、このように「正のスパイラル」が発生します。
もちろん、惜しくも二位、三位だったとしても、しっかり成果にこだわり「悔しい……次は絶対に一位を獲ってやる!」と思えば、その経験を糧にして、よりパフォーマンスが上がってくるのですが、ここで気を付けなければならないのが、「まぁ、別に一位を獲らなくても、二位になったし、十分だな!」と思ってしまうことです。人間とは、どのような人であれ、無意識に「現状維持」をしようとする生き物なのです。
この話は後ほど詳しくお話ししますが、今よりもパフォーマンスを上げようと意識的に考えていなければ、それが衰退への一歩になります。結論からいえば、一位を獲れないことに慣れ続けてしまうと、「負のスパイラル」が発生してしまうのです。
現状に満足した瞬間に、今以上に成果を上げようという意欲は低下します。「昨年ある程度の結果は出したし、まぁ今年はいいか……」という発想になってしまうのです。一位の人のように認知されることもなく、周りからの期待も徐々に減っていくと、次第に「俺は、ちゃんとやれば成果が出るから、また次に頑張ればいいか」と、半ば諦めの気持ちが湧いてきます。
わかりやすくするためにあくまでも一例としてお伝えしましたが、差自体はほんのわずかであったとしても、その後の「仕事に対する姿勢・取り組み」、そして「自分に対する自信」、それだけでなく「その後の大きな仕事をつかむチャンス」にまで、影響を及ぼす可能性があります。
今までさまざまな人にお会いしてきましたが、どのような業界であっても、トップを獲っている人はトップを獲り続けることにこだわりを持っていると感じます。よく、「勝ち癖」「負け癖」という言葉が使われますが、トップを獲ることにより「勝ち癖」がついているのです。実績を出すことが当たり前となれば、自分の掲げた目標を達成することもまた、当たり前になっていきます。
反対に「負け癖」がついている人というのは、「別に順位にこだわる必要がない」とか「成果を上げられる人と自分は、そもそも持っているものが違う」と考えているのではないでしょうか。
しかしどんな仕事でも、誰にでも、一位を獲るチャンスは必ず存在します。そのチャンスが来たときに、それをきっかけに飛躍できるかできないかは、それまでの経験や準備にかかっているのです。
九回裏二アウト満塁。ここでホームランを打てば逆転勝ちというビッグチャンスが回ってきたとき、ホームランを打つ筋力・技術、精神力がなければそのチャンスをものにすることはできません。常にチャンスに対してアンテナを張り続け、そのチャンスの時までに数多くの成功、失敗の経験を積むことができているか否かで、勝負は決まってくるのです。
常にアンテナを張り、失敗を恐れずに挑戦していれば、一位を獲るチャンスは必ず訪れます。そのチャンスをつかんで一位を獲り、その後、勝ち癖がついてくれば、実は仕事だけではなく、人生そのものまでもが楽しくなっていくのです。