はじめに
「甘え」は自分で気づきにくい感情です。
特に身内に対して、「やってくれて当たり前」、「こんな態度でいてくれて当たり前」と、なんとなく思い込んでいることが結構あるものです。
でも相手のあることですから、なかなかこちらの思うようにはいきません。イライラしてしまいますが、ストレートに「やってくれて当たり前でしょう!」とは言いにくいものです。なぜでしょうか。
相手に対して甘えていることに、自分でもちょっと気づいているからです。そのように、なんとなくでも自分で気づいている人は「甘え」について考えることができる人です。きっとこの本を手にとったあなたも、自分にちょっと甘えがあると気づいているはずです。
自分が甘えているなんてちっとも気づかず、「やって当たり前だろう!」、「なんだ、その態度は!」と怒鳴り散らしている人もいます。そんな人が身近にいたなら、すごいストレスですね。ましてやそんな人から、「甘えるなー!」と最後通告みたいに吠えられたりしたら、「いやいや、甘えているのはあなたでしょ!」と言い返したいところです。でも、ここは冷静にいかなければなりません。
甘えにまつわるストレスは様々あると思います。それらをひっくるめて、この本では「甘えストレス」と表現しました。自分の甘えに気づくことからイライラの解消が始まります。また身近にいる困った人たちの甘えに気づき、うまく対応することで、その人たちから被害をうけることが少なくなります。人間関係のストレスの本質は「甘えストレス」であると私は考えています。
でもなぜ「甘え」なんて感情を人は持つのでしょうか。これにはきっと深い意味があるはずです。この本は、単にストレスをなくすためのハウツー本ではありません。できれば皆さんと一緒に(という気持ちで)甘えの意味も考えながら、人の心というものを眺めてみたいと思います。
なお、この本に登場する事例は、全て架空のものであり、人名も全て仮名であることを予めお断りしておきます。